親世代のためのデジタル遺産整理：専門家へ依頼するメリットと注意点
デジタル遺産整理を専門家に依頼するという選択肢
ご自身のデジタル資産を整理し、もしもの時にご家族が困らないように準備することは、これからの時代において非常に重要なことと言えます。オンライン銀行口座や証券口座、各種サービスの利用アカウント、クラウド上に保管された写真や文書など、デジタル資産の種類は多岐にわたります。
ご自身で整理を進める方もいらっしゃる一方で、「技術的なことが複雑でよく分からない」「どこから手を付けて良いか迷ってしまう」「時間がない」といった理由から、デジタル遺産整理に二の足を踏んでいる方もいらっしゃるかもしれません。
そのような場合、デジタル遺産整理の専門家に依頼するという選択肢も考えられます。専門家の力を借りることで、より安全かつ確実に、そしてご自身の負担を軽減しながら整理を進めることが可能になります。この記事では、デジタル遺産整理を専門家に依頼することのメリットと、依頼する際に知っておくべき注意点についてご説明します。
専門家へ依頼するメリット
デジタル遺産整理を専門家へ依頼することには、いくつかの大きなメリットがあります。
1. 技術的な専門知識と経験を活用できる
デジタル資産は、メール、SNS、クラウドサービス、オンライン金融口座など、非常に多様です。それぞれのアカウントにアクセスし、必要な情報を確認・整理するには、サービスごとの仕様やセキュリティに関する知識が必要となる場合があります。専門家は、これらの多様なデジタルサービスに関する知識や、過去の事例に基づいた経験を持っています。ご自身では困難な技術的な操作や、サービス提供者への問い合わせなども代行してもらえる場合があります。
2. 安全かつ確実な整理を期待できる
デジタル資産には、ログイン情報や個人情報といった非常に重要な情報が含まれています。これらの情報を安全に取り扱いながら整理を進めることは、情報漏洩を防ぐ上で不可欠です。専門家は、セキュリティ対策を講じた上で作業を行います。また、誤って必要な情報を削除してしまったり、手続きに不備があったりといったリスクを減らし、確実な整理を行うことができます。
3. 時間や手間を大幅に節約できる
ご自身の全てのデジタル資産を把握し、一つずつ整理していく作業は、予想以上に時間と手間がかかる場合があります。専門家に依頼することで、これらの煩雑な作業を代行してもらえるため、ご自身の時間と労力を大幅に節約できます。特に、多くのアカウントを所有している方や、作業に時間をかけられない方にとっては大きなメリットとなるでしょう。
4. 精神的な負担を軽減できる
ご自身の死後のことを考える作業は、精神的な負担を伴う場合があります。また、デジタル資産の中には、他人に見られたくないプライベートな情報が含まれていることもあります。専門家は、客観的な立場で淡々と作業を進めるため、ご自身の精神的な負担を軽減できます。また、守秘義務のある専門家に依頼することで、プライバシーに関する不安も和らげることができます。
専門家へ依頼する際の注意点
専門家に依頼することには多くのメリットがありますが、注意すべき点もいくつかあります。
1. 費用がかかる
当然のことながら、専門家に依頼する際には費用が発生します。費用は、依頼する範囲や資産の種類、量、専門家によって大きく異なります。依頼する前に、どのようなサービスが含まれるのか、具体的な費用はどのくらいかかるのかをしっかりと確認し、納得した上で契約することが重要です。
2. 信頼できる専門家を選ぶ必要がある
デジタル資産整理は、ご自身の非常に重要な情報を取り扱うため、信頼できる専門家を選ぶことが最も重要です。実績があるか、料金体系が明確か、プライバシー保護やセキュリティ対策は万全かなどをしっかりと確認しましょう。可能であれば、複数の専門家から情報収集を行い、比較検討することをお勧めします。相談や見積もりを無料で行っている専門家もいます。
3. 全てを任せきりにできない場合がある
専門家はあくまで整理作業のサポートを行います。ご自身のデジタル資産の全体像を把握したり、どの情報を残してどの情報を削除するかといった最終的な判断は、ご自身で行う必要があります。また、全てのサービスアカウントに専門家がアクセスできるわけではありません。二段階認証など、ご自身にしか解除できないセキュリティ設定もあります。専門家と連携しながら、ご自身で対応すべき部分と依頼する部分を明確にすることが大切です。
4. 家族との連携も重要
たとえ専門家に依頼して整理を進めたとしても、その内容や、もしもの時にご家族がどのようにすればよいのかを伝えておくことは非常に重要です。専門家はご家族への引き継ぎ方法についてアドバイスをくれる場合もありますが、最終的にご家族が理解し、対応できるように準備しておくのはご自身の役割です。専門家への依頼をきっかけに、ご家族とデジタル遺産について話し合う機会を持つことをお勧めします。
まとめ
デジタル遺産整理は、ご自身の未来とご家族のために大切な準備です。自分一人で行うのが難しいと感じる場合は、デジタル遺産整理を専門とする業者や、デジタルに詳しい士業（弁護士や司法書士など）に相談し、依頼することを検討するのも有効な手段の一つです。
専門家へ依頼することで、技術的な不安なく、安全かつ確実に整理を進めるメリットがあります。一方で、費用や専門家の選び方、ご自身やご家族が果たすべき役割など、注意点も理解しておく必要があります。
専門家への依頼は、あくまでデジタル遺産整理を進めるための一つの選択肢です。ご自身のデジタル資産の状況や、かけることのできる時間や労力、ご家族との話し合いなどを踏まえ、ご自身にとって最適な方法を選択してください。大切なのは、何もせずに放置せず、何らかの形で整理の第一歩を踏み出すことです。