親世代のためのデジタル遺産Q&A

親世代のためのデジタル遺産:アカウント引き継ぎ機能を使った安全な準備

Tags: デジタル遺産, アカウント引き継ぎ, Google, Apple, デジタル終活, 親世代

アカウント引き継ぎ機能で家族の負担を減らす準備

デジタル遺産の整理は、ご自身にもしものことがあった際、ご家族が手続きで困らないようにするために非常に大切です。これまで、デジタル資産の種類やパスワード管理、エンディングノートでの情報共有について触れてまいりました。

こうした対策に加えて、主要なインターネットサービスが提供している「アカウント引き継ぎ機能」を活用することも、安全かつスムーズな情報共有のために有効な手段の一つです。今回は、このアカウント引き継ぎ機能について、その概要と活用方法をご紹介いたします。

アカウント引き継ぎ機能とは何か

アカウント引き継ぎ機能とは、サービス利用者が亡くなった際に、事前に指定しておいた信頼できる人(配偶者やお子様など)が、そのアカウントに保存されているデータの一部にアクセスしたり、アカウント自体を削除したりするための仕組みです。

これにより、ご家族がパスワードやアカウント情報を知らなくても、サービス事業者が定める正式な手続きを経て、必要な情報にアクセスすることが可能になります。これは、ご自身の死後に家族がアカウントにアクセスできず、困ってしまう事態を防ぐために設計されています。

代表的なサービスのアカウント引き継ぎ機能

多くの主要なインターネットサービスが、これに類する機能を提供しています。ここでは、利用者の多いGoogleとAppleの機能をご紹介します。

Google(Googleアカウント用 inactive Account Manager)

Googleアカウントには、Gmail、Googleフォト、Googleドライブ、YouTubeなど、様々なサービスが紐づいています。Inactive Account Manager(アカウント無効化管理ツール)は、一定期間アカウントが使用されなかった場合に、事前に設定した処理を行うための機能です。

この設定を行うことで、アカウントが一定期間(例えば3ヶ月や6ヶ月など)使用されなかった場合に、以下のいずれか、あるいは両方の処理を実行できます。

設定時には、アカウントが使用されなくなったと判断するまでの期間、データ共有を許可する相手、共有するデータ、および必要に応じてアカウントを削除するかどうかを設定します。共有相手には、設定内容がGoogleから通知されます。

Apple(Apple ID用 デジタル遺産プログラム)

Apple IDは、iPhone、iPad、Macなどのデバイス利用、iCloudストレージ、App StoreやiTunes Storeでの購入などに使用されます。Appleのデジタル遺産プログラムは、ユーザーが亡くなった後、そのApple IDに紐づく特定のデータ(写真、ビデオ、書類、購入履歴など)に、指定した「遺産管理人」がアクセスできるようにする仕組みです。

遺産管理人に指定された方は、ユーザーが亡くなった後に、指定されたアクセスキーと死亡証明書などの書類をAppleに提出することで、対象のデータにアクセスできます。

設定は、iPhoneなどのデバイスから行います。最大5人まで遺産管理人に指定できます。設定を完了すると、指定した遺産管理人に通知されるアクセスキーが発行されます。このアクセスキーは、もしもの際に遺産管理人がデータにアクセスするために必要となるため、安全な方法で共有しておく必要があります。

アカウント引き継ぎ機能のメリットと注意点

メリット

注意点

アカウント引き継ぎ機能と他の対策を組み合わせる

アカウント引き継ぎ機能は非常に有用ですが、これだけで全てのデジタル遺産対策が完了するわけではありません。

まとめ

GoogleやAppleなどの主要サービスが提供するアカウント引き継ぎ機能は、もしもの際に大切なデジタル資産をご家族が安全に引き継ぐための有効な手段です。これらの機能を活用することで、ご自身の意思を反映させつつ、ご家族の負担を大きく減らすことができます。

ただし、全てのデジタル資産をカバーできるわけではありませんので、パスワード管理やエンディングノートの作成など、他のデジタル遺産対策と組み合わせて行うことが重要です。ご自身のデジタル資産を守り、そしてご家族が安心して手続きできるよう、今から少しずつ準備を進めてみてはいかがでしょうか。そして、これらの準備について、ぜひ一度ご家族と話し合う機会を持ってみてください。