親世代のデジタル整理術:使わないオンラインサービスやアカウントを安全に整理する方法
使っていないデジタルサービスやアカウント、そのままにしていませんか?
インターネットを通じて利用できる様々なオンラインサービスやアカウントは、私たちの生活を便利にしてくれます。メール、SNS、ショッピングサイト、ニュースサイト、趣味のコミュニティ、オンライン銀行など、その種類は多岐にわたります。
しかし、これらのサービスを使い始めたものの、いつの間にか使わなくなってしまった、という経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。使わなくなったアカウントがそのままになっていると、いくつかの問題が生じる可能性があります。
例えば、過去の情報が残ったままになること、あるいはサービスからの通知メールが届き続けることなどが考えられます。さらに重要な点として、セキュリティ上のリスクや、万が一の際にこれらのアカウントの存在や内容を家族が把握できず、対応に困ってしまう可能性も否定できません。
デジタル遺産としての整理を考える上で、現在使っていないオンラインサービスやアカウントを適切に整理することは、非常に有効な第一歩となります。この記事では、使わないアカウントを見つけ出し、安全に整理するための方法と注意点についてご説明します。
なぜ使わないアカウントを整理する必要があるのか
使っていないオンラインサービスやアカウントをそのままにしておくことには、いくつかのデメリットがあります。
1. セキュリティリスクの増大
過去に登録した古いアカウントは、設定したパスワードも古くなっている場合があります。もしそのパスワードが他のサービスでも使い回されている場合、一つのサービスから情報が漏洩すると、他のサービスのアカウントも不正利用されるリスクが高まります。また、使っていないサービスからのメールが迷惑メールに紛れてしまい、重要な情報を見落とす可能性も考えられます。
2. 情報の散逸と管理の手間
多数のアカウントを持っていると、それぞれの情報を把握し、適切に管理することが難しくなります。どのサービスに登録しているのか、ユーザー名やパスワードは何だったか、などを覚えておくことは負担になります。
3. 家族が対応に困る可能性がある
ご自身に万が一のことがあった場合、ご家族はどのようなオンラインサービスに登録しているかを知ることができません。使っていないサービスであっても、ご家族がその存在を把握できないと、解約や削除の手続きが必要になった際に非常に手間取ることが予想されます。ご家族が代わりに手続きを行おうとしても、ログイン情報が分からなければスムーズに進めることは難しいでしょう。
これらの理由から、使っていないアカウントを整理することは、ご自身のデジタル環境を安全に保ち、将来ご家族に負担をかけないためにも重要な取り組みと言えます。
使っていないアカウントを見つける方法
では、具体的にどのようにして使っていないアカウントを見つけ出せば良いでしょうか。
1. メールボックスを確認する
サービスの登録時には、通常メールアドレスが使用されます。過去に受け取った「会員登録完了のお知らせ」「アカウント開設」といった件名のメールや、サービスからの定期的なお知らせメール(メールマガジンなど)を検索してみるのが効果的です。キーワードとして「登録」「アカウント」「会員」「お知らせ」「退会」「解約」などを入れて検索すると、過去に登録した覚えのないサービスが見つかるかもしれません。
2. スマートフォンやPCのアプリ一覧を確認する
スマートフォンにインストールされているアプリ一覧や、PCにインストールされているプログラム一覧を確認します。使っていないアプリの中に、オンラインサービスと連携しているものや、アプリ自体がサービスとして機能しているものがあるかもしれません。しばらく使っていないアプリは、一度起動してみて登録状況を確認するのも良いでしょう。
3. クレジットカードや銀行口座の利用明細を確認する
有料のサービスやサブスクリプション型(月額課金など)のサービスに登録している場合、クレジットカードや銀行口座の明細にその履歴が残っていることがあります。身に覚えのない請求がないか確認する過程で、過去に登録した有料サービスが見つかることがあります。
使わないアカウントの整理方法:基本の手順
使っていないアカウントが見つかったら、次にその整理を行います。整理の選択肢としては、「アカウントの削除(退会・解約)」と「情報の確認・記録」があります。基本的には、今後利用する予定がないのであればアカウントの削除を検討するのが良いでしょう。
1. サービスのログイン情報を確認する
まずは、見つけたサービスのログイン情報(ユーザー名やメールアドレス、パスワード)を探します。パスワード管理ツールや、過去にメモした情報などを確認してください。もしパスワードが分からない場合は、「パスワードを忘れた場合」の手続きを利用して再設定を行います。この際、登録しているメールアドレスや電話番号が必要になります。
2. 退会・解約の方法を調べる
サービスのウェブサイトやヘルプページで、退会・解約の手順を調べます。サービスによっては、手続きが分かりにくい場所に記載されていたり、特定の条件下でないと手続きできなかったりする場合もあります。通常、「ヘルプ」「Q&A」「FAQ」「お問い合わせ」「アカウント設定」「プライバシー設定」といった項目の中に退会・解約に関する情報があります。
3. 必要な情報がないか確認する
アカウントを削除すると、過去の利用履歴、投稿したコンテンツ(SNSなど)、保存したデータ(クラウドストレージなど)、購入履歴などが全て消えてしまう可能性があります。後から必要になる情報がないか、削除手続きを行う前に必ず確認し、必要であればバックアップを取っておきましょう。
4. アカウントの削除(退会・解約)手続きを行う
手順に従って、アカウントの削除を行います。手続きが完了すると、登録したメールアドレスに「退会完了のお知らせ」のようなメールが届くことが多いので、これも確認しておくと良いでしょう。
5. 解約後の確認
有料サービスの場合は、解約手続きが完了したか、次回の請求が発生しないかなどを改めて確認しておきましょう。
整理を進める上での注意点
- 慎重に判断する: 一度削除したアカウントは元に戻せないことがほとんどです。本当に今後一切使わないサービスか、慎重に判断しましょう。
- 関連するサービスも確認する: 特定のサービスを退会すると、それと連携している他のサービスにも影響が出る場合があります。関連性を確認しておきましょう。
- フィッシング詐欺に注意: 退会手続きを装った不審なメールやサイトに注意が必要です。サービスの公式サイトであることをしっかり確認してから手続きを行いましょう。
- パスワードの使い回しをやめる: この機会に、同じパスワードを複数のサービスで使い回している場合は、それぞれのサービスで異なる、推測されにくいパスワードに設定し直すことを強くお勧めします。
整理した情報は記録しておく
使わないアカウントを整理・削除したことに加えて、今後も利用するアカウントの情報も整理し、記録しておくことがデジタル遺産対策として非常に重要です。
- アカウント一覧を作成する: どのようなオンラインサービスを利用しているか、サービス名、登録したユーザー名(またはメールアドレス)、登録している可能性がある電話番号などを一覧にしておくと、ご自身で管理しやすくなります。
- パスワード管理ツールを利用する: 安全かつ確実にパスワードを管理するために、パスワード管理ツールの利用を検討するのも一つの方法です。これにより、複雑なパスワードをサービスごとに設定しても、一つのマスターパスワードだけ覚えておけば良くなります。
- エンディングノートなどに記載する: 作成したアカウント一覧や、パスワード管理ツールを利用している場合はその情報などを、エンディングノートやご家族との間で共有する資料に記載しておくことを検討しましょう。ただし、パスワード自体をそのまま書くのはセキュリティリスクがあるため、慎重に検討してください。パスワード管理ツールのマスターパスワードや、データの保管場所などを伝える形が考えられます。
家族と話し合うことの重要性
ご自身のデジタル資産について、ご家族と話し合っておくことは非常に重要です。使わないアカウントの整理を進めていることや、どのようなオンラインサービスを利用している可能性があるかなどを、普段から少しずつ伝えておくと良いでしょう。
ご家族がデジタルにあまり詳しくない場合でも、ご自身が整理したアカウント一覧や、万が一の際に参照してほしい情報がどこにあるかなどを伝えておくことで、ご家族の負担を大きく減らすことができます。
まとめ
使っていないオンラインサービスやアカウントの整理は、デジタル遺産対策の第一歩として非常に効果的です。セキュリティリスクの軽減、ご自身の管理負担の軽減、そして将来のご家族の負担軽減につながります。
まずはメールボックスの確認などから始め、使っていないサービスを見つけることからスタートしてみてください。そして、安全な方法でアカウントの削除や情報の整理を進め、その内容をご家族と共有することを検討されてはいかがでしょうか。
ご自身のペースで少しずつ進めることが大切です。この情報が、親世代の皆様のデジタル遺産整理の一助となれば幸いです。